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07:キュレーター 北川フラムさんの場合

 自分は四国の人間ですので割と身近な瀬戸芸について考えることも良くあるんですけど、こうしてみると北川さんのアート観が本当に見事に実践されていて驚きますね。あれほどの規模のプロジェクトを実現するための労力は想像を絶するものだろうと思いますが、それを次から次に請け負って実現してこられたというのがちょっと想像できないくらいです。色々批判もあるとは思いますが、ちょっと余人をもっては代え難いという人ですね。ただでさえ小さい日本の現代アート界の裾野を大きく広げてこられた功績は本当に素晴らしいと思います.

目次

北川フラムさんの経歴

基本情報

  • 1946年10月5日、新潟県高田市(現・上越市)生まれ。
  • 東京芸術大学美術学部卒業。仏教彫刻史を専攻。
  • アートディレクター、アートフロントギャラリー代表。

活動の概要

  • 学生時代から音楽や演劇などアングラ文化のイベント企画に関わる。
  • 1971年、東京芸大の学生・卒業生を中心に「ゆりあ・ぺむぺる工房」を設立し、展覧会やコンサート、演劇の企画・制作を始める。
  • 1982年から代官山で「アートフロントギャラリー」を経営し、国内外で美術展や芸術祭のプロデュースを展開。

代表的なプロデュース・ディレクション

  • 「アントニオ・ガウディ展」(1978~1979年)。
  • 「子どものための版画展」(1980~1982年)。
  • 「アパルトヘイト否!国際美術展」(1988~1990年)。
  • 「ファーレ立川アートプロジェクト」(1994年)。
  • 「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(2000年~)総合ディレクター。
  • 「瀬戸内国際芸術祭」(2010年~)総合ディレクター。
  • 「北アルプス国際芸術祭」(2017年~)、 「奥能登国際芸術祭」(2017年~)などでも総合ディレクター。

受賞歴・栄誉

  • 紫綬褒章(2016年)。
  • 朝日賞(2017年度)。
  • 文化功労者(2018年)。
  • イーハトーブ賞(2019年度)ほか、フランス、ポーランド、オーストラリアからも勲章を受章3

家族・名前について

  • 父は良寛研究家の北川省一。
  • 姉の夫は建築家の原広司。
  • 「フラム」は本名で、ノルウェー語で「前進」を意味する。

特徴・思想

  • アートによる地域再生の先駆的存在とされ、過疎高齢化地域での芸術祭を通じて地域活性化を実践。

北川フラム氏は、現代日本を代表するアートディレクターであり、芸術祭を通じた地域づくりの第一人者です。特に「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「瀬戸内国際芸術祭」の総合ディレクターとして知られ、国内外で高く評価されています。

北川フラムさんのアート観

アートは「社会的共通資本」
北川フラム氏は、アートを単なる個人の表現や美的対象としてではなく、「社会的共通資本」として捉えています。つまり、アートは社会全体の財産であり、人々の生活や地域社会にとって不可欠な存在であると位置づけています。

「人間は自然に内包される」
彼の芸術祭ディレクションの根本理念は「人間は自然に内包される」という思想です。これは、人間の営みやアート活動が自然環境や地域の暮らしと切り離せないものであるという認識に基づいています。特に「大地の芸術祭」では、地域の風土や歴史、住民の生活に根ざしたアートを重視し、アーティストにも土地の特色を活かした作品づくりを求めています。

暮らしとアートの密接な関係
北川氏は、アートは本来、暮らしに密着し、人々に喜びを与えるものであると考えています。美術館やギャラリーという閉じられた空間だけでなく、地域社会の中にアートを持ち込み、住民や来訪者が日常の中で体験できることを重視しています。

プロセス重視とコミュニケーションの力
作品そのものの力だけでなく、アートを制作・設置する過程で生まれるコミュニケーションや協働にも大きな価値を見出しています。アーティストと地域住民、運営スタッフなど多様な人々が関わり合うことで、地域に新たなつながりや活力が生まれると考えています。

アートの多様性と現場体験の重要性
アートは多様な形を持ち、作品だけで完結せず、周囲の環境や地域社会と一体となって初めてその意味や魅力が伝わると強調しています。そのため、現場で体験することの意義を強く訴えています。

地域再生と誇りの創出
特に過疎や高齢化が進む地域で、アートを通じて地域の魅力や誇りを再発見し、住民が自分たちの土地に自信を持てるような活動を目指しています。芸術祭を通じて「島の力」や「海の復権」など、土地固有の価値を再認識することを重視しています。

「アートは本来、ラスコーの洞窟壁画のように、人々の暮らしの中から自然発生的に生まれ、人々の暮らしに喜びを与えるものだったはず。私は大地の芸術祭で、アートが持つ喜びを人々の手に取り戻したいと考えました。」

北川フラム氏のアート観は、アートを社会や自然、地域の暮らしと深く結びつけ、アートを通じて人と人、土地と人をつなげることに重きを置いている点が特徴です。

北川フラムさんの主な著作

北川フラム氏は、アートと地域、社会との関係をテーマに多数の著作を発表しています。代表的な著作を以下にまとめます。

主な単著・共著

  • 『ひらく美術 地域と人間のつながりを取り戻す』(ちくま新書、2015年)
    地域とアートの関係、アートによる地域活性化の実践を語る代表作。
  • 『美術は地域をひらく 大地の芸術祭10の思想』(現代企画室、2014年)
    「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の理念や実践を10の視点から解説。
  • 『直島から瀬戸内国際芸術祭へ─美術が地域を変えた』(現代企画室、2016年、福武總一郎との共著)
    直島や瀬戸内国際芸術祭の現場から、アートが地域をどう変えたかを論じる。
  • 『希望の美術・協働の夢 北川フラムの40年 1965-2004』(角川学芸出版、2005年)
    北川氏の活動の軌跡をまとめた自伝的著作。
  • 『越後妻有里山美術紀行』(現代企画室、2023年)
    「大地の芸術祭」の里山をめぐる美術と地域の記録。
  • 『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2006』(現代企画室、2007年)
    芸術祭のドキュメントと解説6
  • 『ファーレ立川パブリックアートプロジェクト 基地の街をアートが変えた』(現代企画室、2017年)
    パブリックアートによる都市再生の記録。
  • 『アートの地殻変動 大転換期、日本の「美術・文化・社会」』(美術出版社、2013年)
    日本の美術と社会の変化を論じる。
  • 『丹下健三 伝統と創造 –瀬戸内から世界へ』(美術出版社、2013年)
    建築家・丹下健三と瀬戸内の関係を論じる。

その他、芸術祭公式ガイドブックや展覧会記録集など、多数の監修・編著も手がけています。

北川フラム氏の著作は、アートによる地域づくりや社会との接点に関心がある方にとって必読の内容です。

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