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12:南塚真史さんの場合【NANZUKA(ナンズカ)】

NANZUKA(ナンズカ)は、東京・渋谷を拠点とする現代アートギャラリーであり、その存在は、アート界における「正統」と「異端」の境界線を意図的に攪乱し続けてきた。南塚真史のディレクションによって2005年に創設されて以来、NANZUKAはマンガ、アニメ、ストリートアート、ファッション、グラフィックデザインなど、これまで美術制度の周縁に置かれてきた表現を、美術館級の扱いへと昇華させる実験場となってきた。

伝統的な現代アートギャラリーの多くが、西洋的文脈に依拠しながらグローバル市場への接続を図る中、NANZUKAはむしろ「非西洋的なるもの」、すなわち日本発のポップカルチャーやオルタナティブな視覚言語にこそ普遍性があるという信念を持つ。空山基のサイボーグ美学、田名網敬一のサイケデリックな図像体系、横山裕一の時間構造をもつ“ネオ漫画”的作品など、NANZUKAが擁する作家たちはいずれもジャンルの境界を撹乱する存在である。

このギャラリーの特徴は、単なる「カルチャーとアートの融合」を超えて、「未だアートと認識されていない領域に価値を見出し、国際的な審級に乗せる」ことにある。その意味でNANZUKAは、マーケット戦略としての商業ギャラリーであると同時に、美術史の空白を塗り替えるオルタナティブなキュレーション拠点でもある。

今日、世界の主要都市で開催されるアートフェア(Art Basel、Frieze、ComplexConなど)に参加し、James JeanやHaroshi、Javier Callejaといった国際的な人気作家を取り扱うNANZUKAは、「ストリートの声」と「ホワイトキューブ」の壁を往還する、きわめて稀有な存在である。その活動は、美術とは何かという問いを繰り返し投げかける、批評性に富んだ実践と言えるだろう。

目次

南塚真史さんの経歴

基本情報

  • 1978年、東京都生まれ。
  • 早稲田大学第一文学部美術史学専修を卒業後、同大学文学研究科美術史学専攻修士課程を満期退学6

キャリアの歩み

  • 2005年、渋谷にコンテンポラリーアートギャラリー「NANZUKA UNDERGROUND」を設立(のち「NANZUKA」に改称)。
  • ギャラリー設立以前にどこかのギャラリーで修行した経験はなく、独立して自らギャラリーを立ち上げた6
  • 田名網敬一、空山基、山口はるみ、佐伯俊男など、既存の美術の枠にとらわれない作家や、モリマサト、Haroshi、ダニエル・アーシャム、佃弘樹、トッド・ジェームスなど国内外の新進作家を積極的に紹介してきた。

主な活動・実績

  • 渋谷区神宮前の「NANZUKA UNDERGROUND」、渋谷PARCO内の「NANZUKA 2G」、中目黒の「3110NZ by LDH Kitchen」など複数のスペースを運営し、アートと異業種のコラボレーションも手がけている。
  • 2013年にはAISHO MIURA ARTSと共同で香港支社「AISHONANZUKA」をオープン。
  • ファインアートとコマーシャルアートの壁を越えた企画や、ファッションブランドや有名メゾンとのコラボレーションも多数展開し、日本のアートシーンに新しい解釈をもたらしている。

人物像・評価

  • アンダーグラウンドストリートカルチャーや音楽、ファッションにも造詣が深く、既存のアート文脈にとらわれない独自の視点でギャラリー運営を行う。
  • 東京のアートシーンを牽引する存在として、革新性とアカデミックな知見を併せ持つギャラリスト・キュレーターとして高く評価されている。

まとめ

南塚真史は、早稲田大学で美術史を学び、2005年に独立してギャラリー「NANZUKA」を設立。既存の枠組みにとらわれない作家の発掘・紹介や、異業種とのコラボレーションを通じて、日本の現代アートシーンを牽引するギャラリスト・キュレーターです。

■ 南塚真史さんのアート観

1. 「サブカルチャー=現代社会の真実」

南塚は、ストリートアート、アニメ、漫画、ゲーム、フィギュア、ファッションといった「サブカルチャー」が、今日の社会におけるリアルな感情や価値観を反映していると考えています。

「現代社会の精神性や空気を表現する上で、ストリートカルチャーや漫画的表現は極めて有効である」
という信念のもと、アーティストたちに自由な表現の場を提供しています。

2. 「ジャンルや高低の区別を越える」

アートと商業デザイン、サブカルと純粋芸術の境界線を取り払うようなキュレーションを実践。
たとえば、空山基のセクシャルなサイボーグ像や、Haroshiのスケートボード彫刻など、従来の美術界では評価が分かれる作品も、「現代美術」として正面から扱っています。

「アートの価値を決めるのは権威ではなく、社会と人々の感覚だ」
という立場です。

3. 「グローバル市場とローカル文化の融合」

南塚は、日本のアーティストを海外に紹介するだけでなく、Javier Calleja などの海外アーティストを日本文化に接続して紹介する活動もしています。
その中で、「西洋中心」の現代アートシーンに対して、日本やアジアのビジュアル文化から切り出した価値を投げかけています。

4. 「観客との共鳴を重視する」

彼はアートを「知識層だけのもの」とするのではなく、誰もが共感し楽しめる視覚的体験と位置付けています。
そのため、展示空間にはポップなビジュアルや没入感のあるインスタレーションが多く、SNS時代の「共有される美術」にも意識的です。

■ 南塚真史さんの言葉(抜粋・要旨)

1. 「“現代アート”と“オタクカルチャー”は地続きにある」

「今の日本において最も強い創造力を持っているのは、アニメやフィギュア、ストリートのカルチャーに根差した表現者たちです。彼らの中にこそ、21世紀の現代美術がある。」
(『Pen』2021年インタビューより)


2. 「既存の制度の中で評価されることより、もっと深く、人間の記憶に刻まれるものを作る方が価値がある」

「私が関心を持つのは、“美術史に残ること”よりも、“時代の中で必要とされること”です。制度に守られるよりも、制度を更新する存在に惹かれます。」


3. 「アートは少数のエリートのものではなく、みんなのもの」

「“見る人”の中に何かを発火させるような力がアートには必要です。難解な理論よりも、まず感情に響くこと。そこに人間的な普遍性がある。」


4. 「ジャンルに意味はない」

「私は“アーティスト”と“デザイナー”や“漫画家”といった職業的なラベルには興味がありません。
作品が強ければ、それだけで十分です。」


5. 「アートは社会の鏡であると同時に、未来の種でもある」

「社会が向かう先を、アーティストたちは無意識に可視化しています。だからこそ、今を生きる私たちは彼らのヴィジョンを真剣に見るべきだと思う。」

南塚真史さんの著作

主な書籍・監修作品

1. 『Pen Magazine』(CCCメディアハウス)

  • 南塚氏はたびたび現代アート特集号で登場し、特にストリートアート、オタク文化、空山基特集の号では巻頭インタビューを受けています。
  • 例:「Pen 2021年6月号 特集:ストリートアートが現代アートを動かす」など

2. 『美術手帖』(BT/美術出版社)

  • インタビュー掲載やコレクターとの対談形式での出演があります。
  • 特に2020年代以降のNFTやフィギュアアート特集では、アートマーケット論に関する発言あり。

3. 『Tokyo Pop Underground』展図録(NANZUKA制作)

  • 2019年にロサンゼルスのJeffrey Deitchギャラリーと共催した展覧会図録。
  • 南塚による前書き(英語)やアーティスト解説があり、彼のキュレーション観やアジア文化論が反映されています。

4. 『空山基:セクシャル・ロボットの世界』(NANZUKA編集)

  • NANZUKAギャラリー刊行のカタログ形式の書籍。南塚が空山作品について語る序文あり。
  • 一部英語併記で、国際的なマーケット戦略の一端も見える内容。

5. 『Haroshi Works』(NANZUKA・Haroshi共著)

  • スケートボードを再構成した彫刻家・Haroshiとの協業による図録。
  • アーティストとの協働における「制作とディレクションのバランス」に触れている。

■ その他の発信メディア

  • YouTube:NANZUKAのチャンネルでは、展示の裏話や本人インタビューも一部公開。
  • Instagram(@nanzukaunderground):本人のコメントやキュレーション意図がたびたび投稿される。
  • **Podcast(英語圏のギャラリートーク番組)**にゲスト出演したこともある(例:Jeffrey Deitchとの対談など)。
  • 『KILLER JOE’S』
    • 著者:田名網敬一、南塚真史
    • 内容:1960~70年代の田名網敬一初期作品を網羅し、未発表のペインティングやコラージュなどを多数収録した作品集。南塚真史は監修として携わっています123

その他の寄稿・インタビュー掲載

  • 「gallerist interview ギャラリスト・南塚真史に聞く アーティストとの共闘で生み出す新たな価値」
    • 南塚真史によるインタビュー記事。アーティストとの協働や現代アートの価値創造について語っています67

※現時点で南塚真史単独の著書は確認できませんが、監修・共著やインタビュー記事の形で多数の出版物に関わっています。

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